ロード世界選手権を制覇したマチュー・ファンデルプール。ここ数年で大きく知名度を上げた彼は知らない人の方が少ないでしょう。シクロクロスMTB出身で輝かしい実績がある彼ですが今回はロードでのアルカンシェルを記念して彼について詳しく見ていきたいと思います。
詳細
ジュニア時代
マチューは2009〜10シーズンにジュニアデビューを果たし自転車レースの世界に入ります。そして彼が目覚ましい成績を収めたのは2012〜13シーズン。なんと同シーズンのレースにおいて世界タイトルを含む、出場した32レースすべてで優勝しました。
まさに向かう所敵無しの無双状態。
幼少期のマチューを最もよく知っているのは彼のお兄さんであるデヴィット。彼もまた自転車レースで高い成績を収めていますがそれを大きく上回る自らの弟についてこの様なコメントを残しています。
「マチューはいろんなスキルを持っています。彼にとってはレースのすべてが大きな遊び場だったのではないでしょうか。周りがどんなに苦しい顔をしていても彼だけは楽しんでいる様に見え、いつもいつも私より速く駆け上がっていきました。まぁ今もなんだけどね。」
デヴィットと共にジュニア時代の自転車生活を過ごしたマチュー。最初に所属した自転車チームとしてBKCP-Powerplusに加入、その後兄と同じBeobank-Corendonに移籍します。ジュニア時代には世界ランキング1位にも輝いています。
ジュニア時代をレースと共に歩み、数々の輝かしい実績を積み上げたマチュー。17歳の頃兄のデヴィットと共にベルギーのアルペシン・フェニックスに加入します。彼はキャリアの初期に多くのシクロクロスレースやジュニアレースのタイトルを獲得し続けました。
サイクリングスタイル
マチューのスタイルはと聞かれるとパンチャーと答えます。
ゴール目前でピュアスプリンターと争えるだけのパワーとスピードを有し、さらに数キロ先から単独でもゴールを狙っていけるスタミナも併せ持っています。そしてなんといってもシクロクロスで培った極限のインターバル能力こそがマチューの真髄です。
これまでのレースを見ている限り、序盤こそおとなしく、中盤から終盤にかけて度重なるアタックを仕掛け集団をふるいにかけます。絶妙なアタックの切れ目で周りの意表を突き、集団を崩壊させる一撃必殺の切れ味鋭い単独アタックを仕掛けます。この状態からさらにギアを上げて逃げ切るというベルギー人の大好きな圧倒的勝利スタイルが彼のサイクリングスタイル。
ロードレースを行っている人であればわかると思うのですが数々のアタックからの逃げ切りというのは頭ひとつ抜きに出た能力(レース勘、身体能力)が必要です。この圧倒的なストロングスタイルが多くのファンを魅了し、レースを盛大に盛り上げています。
周回コース内に小高い丘のあるようなテクニカルなクリテリウム、一級ほどではないような山岳が連続する200キロクラスのコースなどが彼にとって最高に輝けるシチュエーションとなるはずです。
第120回となった今回のパリ〜ルーベはこれまでの常識を覆すほど高速でなんと序盤から平均速度時速 50 キロでレースは展開します。レース序盤の追い風基調というシチュエーションも手伝いなかなか逃げが決まらず、90kmを超えた頃ようやく始めの[…]
唯一の弱点を挙げるとすれば若干仕掛けるのが早いことでしょうかwwwこれは本人にも自覚がある様でたまに反省している姿を見かけますwww
グランツールに対する才能
25年間にも及ぶジャーナリストおよびフィールドレポーター活動を通じ、サイクリングを取材してきたレナート・ショットはマチューが特別な存在であると語ります。
「彼の中にはグランツールライダーの素質があります。私のこれまでの経験上彼が将来ロードレースに特化すれば、GC (一般分類) の候補になることに私は確信を持っています。」
これを物語っているのは2021年のツール・ド・フランス。2日目にリードを奪いマイヨジョーヌを獲得すると翌週まで守り抜きました。
「チームにとっても私にとっても素晴らしい一週間でした。ステージで2勝を上げることができただけでなく、マイヨジョーヌを6日間着続けることができた。これは私にとって初めてのグランツールだったがこのような結果が出せたことは誇りに思っています。」
とマチューは語っています。
この時のマチューは何もジャージを奪われたわけではなく、この後に控えるオリンピックに照準を合わせていたため途中で棄権し、ジャージを明け渡すことになりました。
もしあの後もマチューはチーム一丸となってツールに参加していたとすれば結果は大きく変わっていたでしょう。
マチュー・ファンデルプールと同じヘルメットなら
【ワイズロード】で取扱い中!👇
マチューの休日
マチューはまだ結婚していませんが、ロクサーヌ・ベルテルズというガールフレンドがいます。彼女はベルギーのアントワープを拠点とするファッションブロガーで現在30歳、マチューより2歳年上だそうです。
なんと彼女のペットは日本の柴犬!愛犬の名前はまさかのローラ!という情報も…。
ローラというよりは確実に花子…。
良い時も悪い時も
世界選手権制覇など最近の成功とは裏腹に、マチューにとって苦い思い出となったのは2021〜2022年のシーズンではないでしょうか。
2021年の東京2020オリンピックでマウンテンバイククロスカントリーレースに出場、優勝候補筆頭だったマチューでしたが思わぬトラブルが発生。レース前のトレーニングでは使用できていたドロップオフのスロープがレース本番では撤去されていたことで大きく転倒、腰を負傷してしまいました。
マチュー・ファンデルプール選手(アルぺシンフェニックス)[caption id="attachment_15207" align="aligncenter" width="1024"] Photo News / Tim van Wich[…]
この時負傷した腰の怪我は次第に悪化、背中にも広がりました。これにより体調面のコンディション悪化がレースに大きな影響を及ぼし、シクロクロスシーズンのレースをほとんど欠場、なんとかコンディションを戻して手にした功績はフランダースでの優勝でした。
怪我に苦しむ世界王者[caption id="attachment_16815" align="aligncenter" width="1024"] photo:So Isobe[/caption]シ[…]
功名が見え始めた矢先、またしても彼にはオーストラリアで開催されたロード世界選手権が最悪の形で立ちはだかることになってしまいました。
大会前にホテルで休んでいたところ子供二人組にいたずらされ起こされてしまいます。これに対し子供を注意したところ若干いざこざとなり子供が負傷、マチューは暴行の容疑で逮捕されてしまいます。
世界選手権大会に一睡もせずに参加することになてしまったマチューはレース開始わずか30kmで棄権する羽目に、問題となっていた暴行容疑に関しては控訴審で有罪判決は覆されたもののシーズンの大きな目標は逃してしまう形になってしまいました。
ついに掴んだロードのアルカンシェル
ロードでの不調などを乗り越え、レース中には落車しながらもアドレナリン全開状態を維持し、ついに!ついに!掴んだ世界選手権タイトル!これでシクロクロス同様アルカンシェルを纏うことになります。これまでもずっと注目してきた選手だけに私もゴールのシーンでは感動しました。
表彰台の構図もまた素敵なもの。マチューの横には左側に永遠のライバルワウトの姿、右側にはツール2連覇経験者のタディ・ポガチャルが…。現在のロードレースシーンを盛り上げる選手がきっちり揃っていました。
来年もまたマチューがアルカンシェルを着るのか…いや来年こそはワウトか…ツール奪還ついでにポガチャルがかっさらうか…。ロードレースが本当に面白い時代になってきました!
- 関連記事
2024年に使用されるワールドツアーチームの機材を紹介しようという今回の記事!シーズン前にしっかりと予習しておくためにもぜひチェックしてみてください!前回記事はこちら![sitecard subtitle=関連記事 […]
- 関連記事
エアロロードという乗り物最高のエアロロードは、ライディングの平均速度をグッと高めます。巡航速度の維持はサイクリングの快感でもあり、最高の爽快感を提供してくれます。この巡航速度の向上には空力性能の向上が絶対条件[…]
- 関連記事
ヴァーチャルサイクリング屋外での実走はとても気持ちが良く最高に充実した時間を過ごせます。が!天気や、仕事などいつもいつも外で走れるとは限りません。そんな時に活躍してくれるのがインドアトレーニン[…]