今大会のジロ・デ・イタリアのタイムトライアルステージでは、世界的にも未発表のバイクやヘルメットなど数多くの新技術がお披露目されました。これまで以上に巨大化したチェーンリングは周囲の目を釘付けにする威力がありました。
中でも非常に高い注目を集めたのは、イネオスグレナディアーズによって採用された
Classified Powershift
Classified Powershiftとは別名「フロント ディレイラー キラー」。
こう言われる所以は一般的なフロントチェーンリングの小径側のチェーンリングの歯数を使用することなく大きくギア比を変速できるリアホイールハブであるということ。
もちろん多少の重量増はあるもののフロントチェーンリングをシングル化した上でこれまでと同等の変速機能を有していることは大きなメリットと言えるでしょう。
気になる実績としては今大会でイネオスが使用し、ステージ7タイムトライアルルートの結果を見るとその効果には期待がもてそうです。
リアハブでの多段変速という特殊な機構だけの進化やメリットだけでなく、フロント側のダブルチェーンリングの空力的なデメリットも押さえ込むことが可能になりシングルチェーンリングのエアロ効果も最大限発揮することができます。
今大会絶好調のポガチャルに順位こそ破れはしたものの、TT2 位のフィリッポ・ガンナは、平地で 66Tという巨大シングル チェーンリングを使用、コース終盤で登場した厳しい登りではハブ側でクライミングに適したギア比へと変更しています。
今大会の登り区間は他のチームにとってタイムトライアルバイクとロードバイクを切り替える選択を用意するほど厳しいものでしたので他チーム(ハブを採用していないチーム)にとってシングルチェーンリングの選択など全く採用されませんでした。
これほどまでの非常に革新的なこの製品、一体どんな構造になっているのでしょうか。
非常に気になります。
Powershift ハブはハブの内部に遊星式歯車システムを採用、ロックアウトモードでは標準の 1:1 のギア比、従来のようにカセットがハブ シェルと同じ速度で回転します。
この状態から高速回転が可能なギア比へと切り替えることも可能で、そのギア比は1:0.686 の比率となっています。
これによってより小さいインナー チェーンリングを使用するのと同じくらいのギア比の差を再現することができ、フロントでシフトチェンジの必要性がなくなります。
ハブはスマート スルーアクスルとペアになっており、バーのボタンをタップすれば Bluetooth を経由して機器の状態がアクティブになります。
重量に関してはハブとスルーアクスルの構造により数グラム程度は増加するものの、インナーチェーンリングとフロントディレイラーがない分トータルの重量は大きく削減できるとしています。
またシングルチェーンリングセットアップはエアロ効果に優れるだけでなく、チェーンラインをより真っ直ぐな角度に設定することが可能となりドライブトレインのフリクションロスを削減することにも一役買っています。
さらにギア変速は非常に高速で瞬時に行われ、ギアリングに大きな負荷がかかっても変速することを可能としています。
いいことばかりに見えるこの機構ですがデメリットもあります。
今大会のイネオスは、このシステムに専用のカセットだけでなく適合ホイールも用意しています。これは特別な機構を採用するプリンストン カーボンワークスのディスク ホイールに搭載され、最終的には調整や加工も含め非常に高価なセットアップになることは簡単に想像できます。
もはや一般のサイクリストがこのセットアップを使うなど夢のような話でしょうこのような革新的な技術をよりリーズナブルに我々サイクリストが使用できる日を心待ちにしておきましょう!
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