ロードバイクのフレーム剛性って、本当に不思議で奥深いテーマですよね。
この永遠の課題とも言える難題を明確に答えることのできる人は少ないのではないでしょうか。
ロードバイク史の中でも剛性至上主義の時代があり、その当時はいかにフレームの剛性を高めることができるかに各メーカー技術を注いでいました。
その中でもSPECIALIZED S-WORKS TARMAC SL4はこの最たるものではないかと思います。

実は私、剛性過多大好きスペックオタク人間。もちろんSL4も所持ししておりました。
私が所持したのはSL4の中でも剛性最強と言われる49サイズ。サイズごとに合成を最適化する手法(ライダーファーストエンジニアリング)がとられ始めたのはSl5からですので当時のスプリントマシンとしてはおそらく最強。

これとやりあえるすればチッポリーニ RB1K THE ONEくらいのものでしょう。ただし気付かされてしまいました。剛性が高い=速いではないことに!
一般的に「剛性が高い=速い・硬い・反応がいい」と思いがちですが、実際は間違ってはいませんが「どこをどれくらい硬くするか」で乗り味は劇的に変化します。また誰にとってどれくらいというのもあります。
今回はそんなロードバイクの剛性のわかるようでわからない不思議な話をしていきたいと思います。自論も交えつつ面白くしていきますのでぜひお付き合いください!
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ロードバイクの剛性が「不思議」に感じる主な理由
剛性は「一方向」じゃない
剛性は一つの方向に向かって強化されるようにイメージされる方も多いと思いますがいろんな方向に剛性は働きます。

例えば
- BB(ボトムブラケット)剛性が高い → ペダリングの力がロスなく伝わる
- ヘッドチューブ剛性が高い → ハンドリングがクイックになる
- シートステー/チェーンステーは柔らかめ → 振動吸収性が上がって快適に
というように「全部ガチガチ=最速」とは限りません。
適材適所、さらに剛性の向きも非常に重要です。
「硬すぎる」と逆に遅くなる不思議

2008〜2014年頃の「剛性至上主義時代」のフレームSpecialized Tarmac SL4、Cervélo R5などはBB剛性が異常に高く、確かに平地スプリントは爆発的でした。
初めて乗った時に違和感を感じるほどの剛性でしたwwwもちろん一瞬のスプリントは最高に反応いいんですが長時間乗ると尻や手は当然痛くなります。
さらに田舎の路面の凹凸でタイヤは好き放題跳ねてグリップを失いがちになります。これは明確なトラクション不足、その度に不見直が必要で疲れにつながります。
結果
実は最終的に「平均速度が落ちる」ケースが多発…輝かしいS-WORKSの文字…速さについてもついには”人による”と言わざる得ないほどのジャジャ馬となっていましたwww
現代=「適材適所の剛性設計」

2020年以降ローロードバイクメーカー各社は一気に剛性至上主義から適材適所設計に方向転換します。
流石に気づいたのでしょう。
当時伝説的選手だったアルベルト・コンタドールさん

レースで使用するように言われていた選手用に提供されるSPECIALIZED S-WORKS TARMAC SL4はあまりにも剛性が強すぎると笑顔で返却、以前のSL3で颯爽とレースに向かったという話もあるほど。
これを受けてかどうかは定かではありませんが、SL5から若干剛性のあり方を考えるようになりライダーファーストエンジニアリングという考え方が出始めました。

このように現代のハイエンドフレームは、むしろ「必要なところだけ硬く、それ以外は敢えてしなやかに」というまともな設計が主流になりました。
SーWORKS VENGEにも乗りましたが最初はタイヤがパンクしたのではないかと思うほど剛性の違いを感じました。しかし剛性を強く感じずとも圧倒的に前に進むその乗り味には圧倒され、さらにさらにスプリントやダンシングにおいてもシャキッとしないとは感じつつも速度はしっかりこれまで以上というように不思議な体験をいたしました。
代表例:
- Trek Madone SLR(IsoSpeedでシートチューブが縦方向に撓む)
- Specialized Roubaix(Future Shock + 柔いシートポスト)
- Canyon Endurace(VCLSシートポスト+細いシートステー)
- BMC Teammachine(D型シートポストで縦剛性だけ下げる)
- Pinarello Dogma F(チェーンステーは太く、シートステーは極細)
これら全てに乗ったわけではありませんがBB剛性は相変わらず高いことは間違いなく。それでいて、「縦方向コンプライアンス」(垂直方向の柔らかさ)を意図的に確保する当たり前の設計思想になっています。
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プロとアマの「最適剛性」は全然違う

悲しいかな私たちサイクリストはどうしてもハイエンドモデルが欲しくなってしまう持病を持ち合わせているもの。
特に私なんかはその持病を長く患っております。
しかし一度立ち返って考えてみましょう。

プロ選手(体重60kg、FTP 6W/kg以上)、このような選手のパワーはどれほどのものか想像できますでしょうか?
そうです。おそらく一緒に走ることがあれば人間かどうかは怪しいほどの凄さでしょう。原付でついていっても何度もアクセルをガバ開けさせられることになると思います。
そんな半ば人間をやめた人たちの異常とも言える出力を受け止めるのがハイエンドフレーム(プロ仕様)、ハイエンドフレームなら人外なパワーも100%きっちり路面に伝えきれる。ここに剛性が最適化されていますのでもし弱かったりすればたわみ過ぎてしまいますよね。
そうです。私たちは幸せながら彼らプロ選手とは違って人間卒業前のちゃんとした人間です。
詰まるところハイエンドフレームは頑張ってスプリントした時くらいしかたわんでいないということになるわけです。

一般サイクリスト(体重60-70kg、FTP 3.5W/kg前後)は、硬すぎるとパワーが「跳ね返されて」ロスになってしまいます。
このような跳ね返されるという言い回し…
正直よくされていますがなかなか分かりにくいしピンとこない…

これを私なりに例えると
硬いアスファルトの上を伝統の工法で作った革靴をいっちょまえにオシャレかまして素足で履いて歩くイメージです。かっこいい靴だからってかっこよく綺麗に歩くためには足に集中しないとなかなか靴と足が噛み合わない。長時間歩くと極度に疲労してしまう、この状態で走ろうものなら速くも走れず靴擦れを起こすだけ、私たち一般サイクリストはこんなイメージです。
プロ選手はタップダンサー並みに革靴を履きこなしています。どんなタイミングでも体重と路面が喧嘩する前にうまく次の足が出て体を前に進ませることができる。走ったとしてもブレることなく完璧にタイミングを合わせられる上に、走るのもめちゃくちゃ速い、プロはこんなイメージです。

実際の体感例
フレーム | BB剛性感 | 快適性 | 体感スピード | コメント |
SPECIALIZED S-WORKS TARMAC SL4 | ★★★★★ | ★☆☆☆☆ | 平地ダッシュ最速 | タイミング合わせ激難。30km/h巡航でも集中してペダリング入力させられ酷く疲れる。 |
SPECIALIZED S-WORKS TARMAC SL8 | ★★★★☆ | ★★★★☆ | 総合最速 | 硬いのに不思議と疲れない。なんか知らんけど速いみたい。 |
2023 Trek Domane SLR | ★★★☆☆ | ★★★★★ | ロング最速 | ガチレースモデルに比べれば違和感を感じるほどフレンドリー。ここぞのダンシングが少しモッサリする |
結論:剛性の不思議の本質

「剛性=速さ」ではなく、「剛性の分布=速さと快適さのバランスをどう選択するか」が現代ロードバイクの設計思想。
さらに剛性の高いハイエンドモデルなら全て解決か?というとそんなことはなく、それ相応のスキルと脚力も必要。自分に合ったモデルを選ぶことは快適なサイクリングには欠かすことのできない最重要項目!
試乗会などに参加することや友人のバイクを貸してもらうなど、とにかくいろんなバイクの剛性感に触れてみることが大事です。
という締めくくりは他の記事でも多々されていることでしょう。
ということで次回各フレームごとにどれくらいパワーがあればしっかりとフレームをたわませてフレーうの本来の仕事をさせることができるのかということを話していきたいと思います。
是非次回もお付き合いください。
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