マチュー・ファン・デル・プールは、シクロクロス、ロードレース、マウンテンバイクのすべてで世界トップクラスの実力を誇る「スーパーオールラウンダー」。しかし、その卓越した才能だけでなく、彼のプライベートや奇想天外お茶目なエピソードもまた、彼を唯一無二の存在にしています。
今回は、そんなマチューのマニアックで面白い話を集めました。
泣くほど悔しがった「魚釣り事件」
マチューは幼少期から競争心が異常に強いことで知られています。ある日、家族と魚釣りに出かけたとき、兄のダヴィドが大物を釣り上げたのに対し、マチューはまったく釣れなかったそうです。
すると彼は、まさかの号泣! しかも「もう二度と魚釣りなんてしない!」と宣言し、本当に釣りには行かなくなったとか。どうやら「勝てないならやらない」という徹底ぶりは、この頃からすでに備わっていたようです。
「プレイステーション禁止令」が出るほどのゲーマー
自転車界のスーパースターである一方、マチューは筋金入りのゲーマー。特に『Call of Duty(CoD)』シリーズにどハマりし、深夜までオンライン対戦を楽しんでいたこともあったそうです。
しかし、レース前日にプレイしすぎて寝不足になり、コーチから「もうゲームは禁止!」と強制的にプレイステーションを取り上げられたことも。トップアスリートらしからぬゲーマー気質に、思わず親近感を覚えますね。
「ベッド事件」— 2021年東京五輪での大失態
東京五輪のマウンテンバイク競技に出場したマチューは、レース序盤でまさかの落車。実は彼、「あるはずのジャンプ台がない」と勘違いしてしまったのです。
これは、前日までの練習走行時にコースに設置されていた人工のジャンプ台が、レース本番では撤去されていたことによるもの。だが、周りの選手は全員そのことを知っていたため、完全にマチューの確認ミス。結果、オランダのエースは開始早々に転倒し、リタイアを余儀なくされました。
さらに追い打ちをかけるように、彼は選手村の「段ボールベッド」にも不満を爆発させ、「こんなベッドじゃ眠れない!」とSNSで愚痴ったことも(ただし、これは冗談だったとも言われています)。五輪の思い出は、あまりにもほろ苦いものとなったようです
父親との「ガチンコスプリント対決」
マチューの父親は、かつての名ロードレーサー、アドリ・ファン・デル・プール。親子関係は良好ですが、こと自転車になると話は別。ある日、父アドリが「まだまだ息子には負けない」と発言したことをきっかけに、二人は本気のスプリント対決をすることに!
結果は…もちろんマチューの圧勝! しかし、アドリは「ちょっと調子が悪かっただけだ」と負け惜しみを言ったそうです。親子の微笑ましいバトルですが、現役時代の父のプライドも相当なものだったようですね。
伝説の「ポガチャルを振り返る余裕」
ツール・ド・フランドル2023のラスト20km、強力なライバルであるタデイ・ポガチャル(ツール・ド・フランス2連覇王者)が後方から迫ってきていました。しかし、マチューは加速しながらも後ろを振り返り、ニヤリと笑ったのです。
この「余裕の振り返り」はファンの間で話題となり、「もう勝つことを確信していたのか?」「あの瞬間、ポガチャルは心が折れたのでは?」と憶測を呼びました。結局、マチューは圧倒的な独走で優勝。心理戦までも制するこのレース運びには、多くのファンが魅了されました。

伝説の「アルケア・ホテル事件」— まさかの逮捕!
2022年の世界選手権直前、オーストラリアのホテルで、マチューがとんでもない事件を起こしてしまいました。なんと、深夜に騒ぐ10代の少女たちにブチギレし、部屋を出て彼女たちを追いかけてしまったのです。その結果、ホテルの警備員に通報され、まさかの「現行犯逮捕」。
このハプニングによって、彼は一晩拘束され、翌日の世界選手権では精彩を欠き、途中リタイア。レース後、「一番の敗因は警察だった」と語ったマチュー。怒りを抑えられなかった彼の気持ちは分かりますが、まさかレース前夜にこんな騒動を起こすとは…。
スパゲッティ大好き! 食生活のこだわり
レース前日の食事として、マチューは必ずスパゲッティを食べるというジンクスを持っています。特にお気に入りは「ペペロンチーノ」で、シンプルなオリーブオイルとガーリックの風味が気に入っているそう。
ちなみに、彼は「カーボローディングのため」と言いながら、時々ワインも飲んでしまうことがあるとか。「レースのため」と言い訳しながら美味しいものを食べるのは、なんとも人間味あふれるエピソードですね。
かわいいマチュー…
マチュー・ファン・デル・プールは、超人的なフィジカルと圧倒的なレースセンスを持つ選手ですが、その裏には人間らしいユニークなエピソードがたくさんあります。
天才的なレース展開、意外な弱点、そしてときにはトラブルメーカーっぽい一面も持ち合わせているからこそ、多くのファンに愛されるのでしょう。
次に彼のレースを見るときは、ぜひこのエピソードを思い出しながら応援してみてください!
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